群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

阪神間

 甲山神呪寺より。村上春樹がエッセイで、次のような文書を書いている。

 僕が生まれた場所は一応京都だけどすぐに兵庫県西宮市夙川というところに移り、それから同じ兵庫県芦屋市に移っている。だからどこの出身かというのは明確ではないのだが、十代を芦屋で送り、両親の家もここにあるのでいちおう芦屋市出身ということになっている。本当のことを言うともっと漠然と「阪神間出身」ということにしてもらえると僕自身しっくりするのだけれど、この「阪神間」ということばのニュアンスは関西関係者以外にはいくぶんわかりづらいところがある。
(中略)
ときどきこういう便利さというか気楽さがあるから、阪神間出身者は東京に出てガツガツ・バリバリやれないんじゃないかという気がすることがある。もちろん中にはそういう人もいらっしゃるとは思うのだけれど、僕は実際にお目にかかったことがない。これは僕の友だち・知人に限ったことかもしれないけれど、みんなわりにのんびりとしていて、酒を飲んで荒れたり他人の足をひっぱったりするようなことはほとんどない。「ま、ええやないか」というあたりでだいたいのカタがついてしまう。

『村上朝日堂の逆襲』より

 一節によると、この甲山が臨めれば阪神間であるとか違うとか(この説が合っているかどうかは私もはっきりとは覚えていないし、確たる裏付けも取れなかった)。