群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

『継続するコツ』

 坂口恭平著『継続するコツ』読了。好きなことを継続することがいかに幸せにつながるか、についての本。頭の中に浮かんだことをそのまま書き出したような文章で、本人も認めているとおり、主題から脱線している箇所も多いのだけど、結果的にその文章が、「質を追求しないことが継続につながる」という自説を体現していて面白かった。以下、引用メモ。

 どうすれば継続できるかということについてこれまで書いてきましたが、よく考えると、実はどんな人でも何かをずっと継続しています。毎日違うことをしている人はそんなにいないはずです。誰もが何かを継続している。しかし、どうやらやりたくないことを継続しているように見えます。やりたいことを継続すればいいと思うのですが、どうやらそれは難しいこととされ、お金にならないこととされ、才能がないと無理だと思われ、みんな諦めていき、そして、お金になるからということで、やりたくないことを継続する生活する生活が始まります。
 しかし冷静に考えると、やりたくないことをどれだけ継続したとしても、やりたくないのですから、当然ですができるだけサボりたいと思ってしまいますから、上手くいくわけがありません。それでもお金になるからいいのかもしれませんが、やりたくもないことをやって本当にお金になるんでしょうか。できるだけ継続したくないことを継続して、お金になるはずがないのではないか。そして、お金になる、ならないの前に、そもそもやりたくないことを継続して何が楽しいのでしょうか。楽しくはありません。楽しくないことが続くと、死にたくなってしまいます。僕に死にたいと電話してくる人に聞くと、確かに彼らはやりたくないことを継続しているようです。死にたくなって当然です。どれだけお金になろうが、やりたくないことをやり続けると死にたくなってしまいます。当たり前のことを言っていますが、この世の問題はこれに尽きるのではないかと僕は思ってます。

 やりたくないことを継続している。それが生活になってしまっている。だから人は死にたくなっています。

 死にたいというよりも、そういう生活を続けたくないってことだと思います。それなら、変えたらいいだけです。
 やりたいことを、好きなことを継続してみる。僕が経験を通じて感じてきたのは、それさえできていたら、実は幸福なんじゃないかってことです。
 でもそれがなかなか難しい。そんなことは不可能だ。多くの人がそう言います。
 僕もずっと周りの人に言われてきました。本を書いたり、絵を描いたり、そんなことを継続したとしても、仕事にならないんだからやめときなさいと、両親にもずっと言われてきました。両親だけじゃないと思います。友達もそれじゃ食べていけないって言っていました。
 でもなんか変な感じです。別に、僕はそれでお金を稼ぐとまでは言わなかったんです。自分でもお金が稼げるとまでは確信が持てなかったので。そういう問題じゃなかったんですよ。それで食べていくとかはどうでもよかった。そうじゃなくて、僕がやりたかったこと、継続したかったことは、本を書いたり、絵を描いたり、つまり自分で何かを作るってことです。それをやっていないと楽しくなかったんです。生きている心地がしなかった。
 だから、稼げなかったらバイトでもすればいいんです。お金は別で稼げばいいんです。で、実際に僕はバイトをしていたんです。それで普通に食べていけていた。それならもう問題はないじゃないですか。稼げる、稼げないは全く僕にとっては問題ではなく、とりあえずできるだけ、生きている時間の多くを、自分が楽しいと思うこと、やりたいと思うこと、好きだと思うことに注ぎたいってだけです。 p202-p205

 

 すごいですよね、人間の否定の力。人間って基本、否定しますよね。
 なんとかなるでしょ! とか言ってくれる人って、ほとんどいませんもんね。ほんとすごいです、否定力。お前は才能がない、どうせお金にはならない、お金がないと生きていけない、老後はどうするどうする、一度成功したとしても決して続かないとか、なんとかかんとか。とにかく人間は自分のことだろうと、他人についてだろうと、とことん否定してきます。僕もついつい感心しちゃうほどの徹底ぶりで、どんどん否定されてました。なんだか、僕よりも両親のほうがこだわって、おいおい、大丈夫かと思うくらいでした。「お前は私の子供なんだから、何やってもきっと上手くいくよ、へっちゃらだよ!」とか、一度くらい言ってみたらいいじゃん、どうした、何が怖いの、そんなに否定したらやる気も起きなくなるでしょう、どうしたのって、むしろ、僕が彼らを心配していたくらいです。
 そんなに否定して何か楽しいことあるの? って、いつも思ってました。
 ちっとも楽しそうに見えないわけです。
 人生を楽しんでないようにしか見えない人が、不安だらけで、その自分の不安を自分でとどめておいてくれればいいものを、どんどん外におもらししちゃって。 p206

 

 怖いとき、楽しいことなんか考えられませんから、怖いからやりたくないことを継続するのですが、それを継続しているとどんどん恐怖心は強まっていきますよね。継続の力の源が恐怖心なんですから。お金がないと死んでしまう、それが怖くて、やりたくない仕事とかを無理に努力して継続しているわけです。その結果、生きるのが嫌になって死にたくなってしまう。そんな話をしていると、なんかおかしくなってきませんか? 一体、何が起きているのかちょっと分からなくなってしまうくらいです。あれ、なんの恐怖心だったっけ? 死ぬのが怖いんだっけ? 死にたいんだっけ? と、こちらもちょっと混乱してしまいます。
 学校でも家庭でも、恐怖心を教育の基本にしすぎなんだと思います。これをしないと食べていけなくなる、みたいなことばっかりですから。そりゃみんな恐怖心を原動力に何かを継続してしまいますよ。だから、やりたくないことを継続してしまうのも無理はないわけです。
 やりたくないことを継続している人は、変に落ち込みすぎないように! もはや問題はあなたのせいではありません。だって、大丈夫大丈夫って言われていたら、こんなことにはならないわけです。もちろん、人間誰しも恐怖心は持ってますよ。でも、この世は恐怖しかないわけじゃないんです。しかも、アマゾンの奥地と比べたら、恐怖は格段と減っています。ほっといても死ぬことはありません。お金がないから死ぬ、なんてのは嘘です。お金がなくなったらお金をもらえるんです、この社会は。お金がなくなったら、生活保護という制度があり、国は人々を助けないといけないんです。それは生きる権利なんで、もらうことはなんの問題もないんです。恥でもなんでもない。 p209

 

 会社を辞めたらお金が得られなくなってしまう、というしょうもない(嘘の)不安が、多くの人の不安になっています。そのこと自体に僕は衝撃を受けています。みんな大丈夫か! と心配になります。まだそんなことを不安がっているのかと、驚いてしまいます。そんなの嘘です。生活保護だってもらえるし、お金って結構簡単に色々と稼げる道があるんです。これ本当です。そんなこと早めに知るべきです。さっさと知ったら、恐怖心はなくなりますから。 p209

 

 でも、親や学校や会社の上司が伝えていることは、ちょっと違うんじゃないかと思ってしまいます。お金がないと死ぬぞと不安ばかり煽って、その成れの果てで、若い子たちが死にたくなってしまっているんです。死なないように働いてきた子たちが、死にたくなっているんですよ。なんかおかしいでしょ。 p210

 

 僕だってそうだったわけです。世間体とか、僕のことを心配しているのか分からないのですが、大学を出てバイトでなんとかすると親に伝えると、バイトなんかじゃ生活できないと言われ、本を書いて自立すると言うと、才能ないからやめなさいと言われ、なんとかそれなりに自立して食えるようになったと元気に伝えると、そんな生活いつまで続くか分からないからと言われてました。
 いつまでビビっとるんじゃい! と突っ込みましたよ。もう笑うしかないですよ。恐怖心はこのように止まりません。
 というか、父親は高卒なんですよ。それでもしっかり飯食べられてるじゃん。むしろ伝えるべきはそっちでしょうよ! p210