群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

英語の話

 たまには英語の話。昔、英検準1級をとるときに、英単語を結構覚えた。英検準1級の単語集以外にも、TOEICTOEFLなどの単語帳も使った。おかげで、筆記試験の点数だけでテストをクリア出来たりした。だが、単語帳で闇雲に単語を覚えるという行為が、今現在役に立っているのかどうかは疑わしい。英単語の意味というのは一つだけではなく、いくつもあるため、文脈的に意味がわからない場合、その都度辞書を引くことになる。私はかなり辞書を引くことが多いと思う。自分の覚えた単語の意味が正確かどうか確かめるためだ。これでは何のために英単語の意味を覚えたのかよく分からない。
 また、こういう例もある。先日テキストを読んでいたら久しぶりに"humble"という単語が出てきた。これは「謙虚な」というぐらいの意味だが、私は昔にこの単語を覚えたとき、単語帳に表記されていた「つましい」という日本語で覚えてしまったため、「つつましい」という日本語で覚えた"frugal"と意味がごっちゃになってしまう。なぜ”humble"と"frugal"を混同するのか、理解できる人は少ないのではないか。だが単語帳で丸暗記をしてしまった人間にとっては、たまにこういうことが起きるのである。
 英単語というのは見た目が似ていて意味がまったく違うというものもあるため、難儀することがある(例えば"relentless"”reckless""restless"”listless"とか)。こういう場合は英語の原文を読んでいて遭遇した時に都度、ほかの紛らわしい単語の意味も思い出すようにしている。私は休日でもほぼ毎日英語をやる。そうしないと英単語の意味を忘れてしまうし、英語を読む感覚も錆びついてしまうからだ。単語に関しては、新しい単語を覚えることよりも、過去に覚えた単語のケアに比重が置かれる。忘れてしまった単語の思い出しと、意味の再定着である。
 英語の単語問題ーーどうすれば効率的に英単語を覚えることが出来るのか。これはまあ、やっている人はやっているのだろうが、語源で覚えることが効率的かと思われる。英単語を構成する語根や接頭辞などの各要素には意味がある。だからその語源の意味を覚えてしまえば、同じ語源を持つ英単語を覚えるときに活かすことが出来る。例えば、”invoke”"revoke""convoke"という単語がある。この3つの単語の場合、共通する語根の"voke"には、「声」という意味がある。"invoke"の接頭辞、"in"の意味は「上に」。「上に呼びかける」から、「祈願する」となる。同様に、「再び」という接頭辞を持つ"revoke"は「再び呼び戻す」から、「取り消す」。「一緒に」という接頭辞を持つ”convoke”は「一緒に呼ぶ」から、「招集する」となる。この語源暗記法なら、英単語のイメージをつかめるようになるから、意味を覚えるのもだいぶ楽になるのではなかろうか。
 杉田敏先生も、語彙力は大事だとおっしゃられていた。この場合の語彙力とは、単語の意味を丸暗記することだろうか。多分そうではないだろう。もっと単語のコアをつかむような感覚に近いのではないか。私の単語力は、20代の頃と比べてどうなのか。増えているのか、減っているのか。当時は1万語近く覚えたはずだが、忘れた単語がある一方で、20代の頃には知らなかった単語を覚えていることもある。語彙数では減っているかもしれないが、コアイメージをつかんでいる単語数は増えている(と信じたい)。
 世の中にはポリリンガルという、多言語を自由に扱える人がいる。黒田龍之助先生などがその一例であろう。私も文化的に関心があるのでたまにドイツ語などをやってみたくはなるが、そんな余裕はない。日々英語だけで精一杯だからだ。こういうのはもう、己の持って生まれたキャパシティというのがあるのだから、仕方がないと割り切るしかない。たとえ1万5000語覚えたところで、ネイティブの単語数は2万とも3万とも言われる。知らない単語に日々向かい合わなくてはいけない。こればかりは地道にやっていくしかないのである。