群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから

 直接会ったことはないが、インターネット上で何となく気になる人というのが何人か存在し、飯田朔さんはそういううちの一人である。そういう人に関しては、今どんな感じで過ごしているのか、たまにグーグルで検索したりする。すると先日、飯田さんの初の著作『「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから』が1月17日に出版されることを知った。めでたいことである。
 飯田さんは学生の頃、「吉祥寺ダラダラ日記」というフリーペーパーを発行しておられた。30代の頃、東京のみじんこ洞のオンラインショップで面白そうなミニコミを見つけると購入し、ついでにフリーペーパーをまとめて送ってもらっていて、その中に飯田さんの「吉祥寺ダラダラ日記」も入っていたのである。面白かったので、「吉祥寺ダラダラ日記」の総集編も購入した。その内容は、「将来のことがよく分からない」という、若い頃に特有のモラトリアムな気持ちが赤裸々に綴られたものだった。同じように、学生時代に将来何をやればいいのか分からず途方に暮れていた私にとって、それは強く訴えかけてくるものがあった。ただ飯田さんのフリーペーパーでは、異様におとなしい学生や大学への批判、そして平坦化する吉祥寺というまちへの嘆きも書かれており、そもそも将来が不安なわりにフリーペーパーを自分で作ってお店に配りにいくという行為は極めて積極的なものであり、若い頃に自分はそういうものを持ち合わせていなかったので、すごいなと思う気持ちもあった。
 飯田さんは大学を卒業した後、批評を勉強したり、スペインに滞在したりしていたようである。今は日本語教師をしておられるのだろうか? 今回の「おりる」というタイトルから推察すれば、飯田さんは誰かを食い物にしてまでサヴァイヴしていくようなことは目指していないのだろう。「おりる」という姿勢は、同じように若い頃生きづらさを感じた者として目指すところであり、そしてメインストリームが極めて歪みおかしくなっている中、見失ってはいけないものだと思う。