群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

『最終頁』

 東京都練馬区古書店「ポラン書房」の閉店を描いた映画『最終頁』を見る。尼崎の書店、二号店さんで上映会もあったようだが、夕立の予報が出ていたので大人しく自宅でYouTubeで視聴。
 パンデミック下で店主の石田さんは補償金をもらって一時休業するが、店を再開したら客足は前よりさらに減っていたという。休業補償というものの功罪を感じさせられるエピソードだった。
 石田さんの人柄やインタビューを受けたお客さんの言葉から、まちのいい書店だったことが伝わってくる。「文明が進みすぎて、今見直しなさいという時期なのだから、ポラン書房の店舗販売がなくなるというのは、それはそれでよしと、大変残念ですけどそういう思いです」「閉めるとなると人が集まる、そんなひねくれた見方もしていました」「たまにしか来ない客でも、人は心のなかで大切な居場所と決めているところがいくつかあるんですね。誰かのそういうひとつになれたことは、幸せな古本屋であったと思います」という石田さんの言葉が印象的。まったく心残りがないわけではないし喪失感もあるのだが、不思議と優しい余韻が残るというか。何らかのかたちで復活しないんですかね、このお店…。
 日本の本屋の現状というのはどうなっているのだろう…と思いを馳せる。田尻久子さんの『これはわたしの物語』に次のような一節があった。

「こんな時代に、なぜ本屋をやるのか」と問われたら、そう簡単には答えられない。「なぜ生きるのか」と訊かれるようなものだから、と。
 私はこの問いに答えられるだろうか。紙の本は減少し、書店の数も減り続ける。しかし、その一方で、小さな本屋が新しくできてもいる。この本は、なぜ本屋はなくならないのかという問いの、ひとつの答えでもある。

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