群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

『本屋、ひらく』

『本屋、ひらく』(本の雑誌社)を読んだ。本書では22人の書店主の文章が収められている。震災後に鳥取県にたどり着き、草刈りのアルバイトなどをしながら本屋を始めた汽水空港さん。「バイクと出合うのに最適だと思ったから本屋という場所を創りました」という、本と、珈琲と、ときどきバイクさん。グリーンランド北極海など、冒険行を体験した後、コロナ下で子どもの居場所を作ろうと思った冒険研究所書店さん。納屋で本屋を始めたNAYA BOOKSさん等々…。一人ひとりがバラエティに富んだ語るべき物語を持っており、読んでいて飽きなかった。
 この本で何度か指摘されていることがある。それは、日販や東販など大手の取次を通すと本屋の粗利率は2割になるが、直取引や取引代行だと3割近くに増える、ということだ(そのかわり返品のできない買い切りが条件になる)。本の売り上げが落ちたから文具の取り扱いを増やした書店があるということを、以前何かの本で読んだ。文具だと書店の粗利率は4割になるからだ。だがそういうことをしてしまうと、本屋が本屋たる魅力は薄れてしまうのだろう。最近、いわゆる「独立書店」が元気なのは、大手の取次を通さなくても本が入手できる経路ができたのも一因なのかもしれない(加えて、書店主は自分の好みの選書も出来る)。素人目に見ても、本屋の取り分が2割というのは少なすぎる…。
 ただ本を買うだけだと、今はもうネット通販で事足りてしまう。電子書籍もある。だが本書に掲載されているような本屋さんには、足を運ぶに足るプラスアルファの魅力がある。それは人間味のある店主たちだったりイベントだったり、横のつながりだったり、会話だったり居場所だったりする。本は人生のおやつです!!さんのように、本屋は地方移住とも相性がいい気がする。書店はまだまだオルタナティブな場として魅力を増していくように感じる。