群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

トンカさん

 花森書林のトンカさんが亡くなられたことを今日知りました。突然すぎて、ちょっと信じられないというのが正直なところです。
 そもそも書店文化に関心を持ったのは、岡崎武志さんの『女子の古本屋』という本を読んだのが始まりなのです。その本に掲載されていた、自宅から一番近いお店は、神戸にあったトンカ書店でした。店主のトンカさんは、初めて店を訪ねてイベントについて尋ねた私にも、とても気さくに接してくださったのを覚えています。
 だけど私は、トンカ書店の熱心な客というわけではありませんでした。30代の頃はほかにコミットすることがあったし、お金はなかったし、そもそも本を購入するということにさほど関心がありませんでした。本はほとんど図書館で借りて読んでいたのです。だから、トンカ書店に足を運ぶのは不定期で、1年に1回ぐらいの時もありましたし、店に入っても何も買わないで出ることもありました。久しぶりにトンカ書店に向かうときの足の重たいことよ…。それなのにトンカさんは私のことを覚えてくれているんですよね…。1回イベントに参加したことがあるだけなのに…。それがすごいというか…。今から思い返すと、かなり失礼なことをしていたと思います。じょじょに経験を重ねて、ひいきのお店に続けてほしければお金を落とさねば、ということを学んでいったのです。
 そういえば、前回花森書林さんに伺ったとき、私は弟トンカさんに「お姉様はお元気ですか」と尋ねたのです。弟トンカさんは「子育てに忙しくて」などとおっしゃられていましたが……最近展示などが催されていない時点で、少しは気づくべきでした。
『みちくさKOBE』という本を購入したときが、トンカさんとの最後の会話になりました。トンカさん、ありがとうございました。多少なりとも本を買うことを覚え、もう少しトンカさんから本を買いたかったです。私は私なりのかたちで、書籍文化に関わり続けていきたいと思います。心よりご冥福をお祈りいたします。