群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「うちの妻ってどうでしょう?」5巻が面白かった

 福満しげゆきさんの「うちの妻ってどうでしょう?」5巻が面白かった。
 どちらかというと、リアルタイムのできごとを描く「僕の小規模な生活」では、以前なら切迫しているがゆえに、次に何が起こるかわからない面白さがあったけど、今では二児をもうけられためか、あまり鬼気迫る緊張感はなくなってしまったように思われる。それに対して、「うちの妻ってどうでしょう?」では、福満さんが世間に対して抱いている愚痴とか、奥さんやお子さんとの何気ないやりとりとか、話題が日常的なぶんだけ、きどりが見えず、安心して読める。
 最新刊では、福満さんがマンガに描いた「童貞を捨てる話」を、普段はほわほわした奥さんに「気持ち悪い」と生々しく斬り捨てられるエピソードが披露される。
 また、攻撃の対象としてきたマンガ家、カラスヤサトシさんのマンガを福満さん風に解釈して描かれたマンガも披露される。
 ここでは、バイトも続かず妻に養われ、ようやくマンガ家として食えるようになっても、「ほのぼのエッセイマンガ家」と揶揄されて新たな境地を模索せねばならない、常に何かに追われてきたようなマンガ家の逼迫感がない。自分は自分でいいじゃないかと認めて、そこから延ばしていった面白さがある。
 友だちもおらず、夜間大学を中退し、足蹴にされ続けた女の子とやっとの思いで結婚し、それに導かれるようにして連載を得、逼迫感に追われて描いてきたのはいいものの、地歩を固めたら固めたでほのぼのエッセイ漫画家と揶揄される。「うちの妻ってどうでしょう?」5巻がすごいのは、福満さんが、揶揄されたところから一歩先に進んだ場所で、ほのぼのと面白いエッセイ漫画を描いておられるところだと思う。ゾンビマンガなどもお好きなようだけど、一読者としては、こういうマンガをもっと読みたいのである。

うちの妻ってどうでしょう?(5) (アクションコミックス)

うちの妻ってどうでしょう?(5) (アクションコミックス)