群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「吉行淳之介ベストエッセイ」

吉行淳之介ベストエッセイ」を読了する。

問題 ある男が、職業的でない女とベッドをともにした。情事の後、男は迷う。ここで帰ってしまうと、女を娼婦扱いしたことになり、女を傷つけてしまう。このまま泊っていくと、女は喜ぶかも知れないが、妻を怒らせてしまう。この場合、どちらにすればやさしさがあるといえるのか。
ヒント① 泊って帰り、翌日妻に嘘をつくのは不可能と知れ。なぜならば、最近は交通事故が多いので、それを口実に、妻は必ず夫の居所をつきとめるからである。
ヒント② 妻に対する罪悪感をまったく感じないでそのまま泊ってしまう男は、人間としてどこか一部分が欠落しているとしか考えられない。
解答① 妻に対する罪悪感、恐怖感に耐えつつ、そのまま女のために泊ってやる。妻は籍にも入っているし主婦という座を持っているのだから、一晩ぐらい我慢してもらう。
 女は自分が娼婦扱いされなかったことに満足する。そして男のやさしさに感謝するだろう。
解答② あまりあり得ないが、女が真にやさしい女だった場合、あたしはもう十分楽しんだから、早く奥さんのところへ帰ってあげなさい。奥さんが待っているわ、と女がいう。男はありがたく帰らせていただく。
 ただし、男は、後で、差し障りのないときに埋め合わせをするべきである。それには、いろいろの形があるから、自分で考えること。

 時代の違いかもしれないけど、こういうのは吉行淳之介先生だから書けることであって、凡人が真似をするとこっぴどいめにあう。妻の女性と破綻するのは目に見えている。結婚したら他の女性とは友人として緩やかにつながるのがベストである。

吉行淳之介ベスト・エッセイ (ちくま文庫)

吉行淳之介ベスト・エッセイ (ちくま文庫)