群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

車道に渦巻く無意識の交感

 僕の主たる交通手段はもっぱらが自転車で、したがって外に出るとほとんど自転車に乗っていることになるんだけど、いつも疑問に思うことがあって、それは、走行中に前方をおぼつかない足どりで歩いているお爺ちゃんやお婆ちゃんがいた場合、ふつうは大きく空いているほうの隙間から抜きさろうと考えるので、そちらの方向に体重をあずけるのだが、そのとたんにお爺ちゃんやお婆ちゃんもその大きく空いた隙間のほうに引き寄せられたように寄ってきて、行く手を塞がれてしまうのである。いったいあれは何なんだろう。なんらかの見えない力が働いているとしか思えない。奇妙な偶然の一致を最近ではシンクロニシティと言ったり、英語では"coincidence"という言葉があったりするけれど、あれは僕にとってはあまりうれしくない"coincidence"である。
 あと、これも走行中に、前方の横道から車が右折や左折しようと勢いよく割り込もうとしてきた場合、僕は出合いがしらにぶつかったりしないよう、スピードをゆっくりと落とすのだが、すると割り込もうとしてきた車のほうも、こちらに合わせたかのようにゆっくりとスピードを落とし、お見合いのようなかたちになってしまうのである。ところが、その車がスピードを落とすだろうとたかを括って、自転車のスピードをキープしたまま強引に行った場合は、その車も先ほどとは違ってスピードを落としたりすることなく、強引に突っ込んでくる。なんだか、とても不条理な気持ちになる。ゆずろうとスピードを落とした場合はむこうもスピードを落とすのに、強引に行った場合は向こうも突っ込んでくる。これが逆だったら、お互い晴れ晴れしい気持ちで交差できると思うのだが、そうなることはあまりないように感じる。僕はこなれたカードライバーではないので、よくはわからないんだけど、強引な自転車に対してはドライバーも張り合う気持ちが出てくるのかもしれない。もう自転車に乗って長いので、危ないポイントはだいたい分かるから、ひやっとするようなことはほとんどないけれど、不可思議な感情の渦に絡めとられてしまったかのような錯覚に陥ることはよくある。車道といえど、人間の感情が渦巻いているのである。