群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

『花束みたいな恋をした』

 映画『花束みたいな恋をした』を見る。文化的な嗜好の一致から意気投合した山音麦と八谷絹。しかし麦が就職したことにより、二人の価値観はじょじょにすれ違いを見せ始めて…というストーリー。
 (特に)本の話が出来なければ、「デュフフ…コポォ…」と、もはや他人とまともにコミュニケートすることさえ出来なくなってしまった私からすると、すごく切実な映画だった。まあその、何だ、会社とか就職について言うならば、変わってしまった麦みたいな人たちとの関係って、私、ほぼ切ってしまったからな…。そんな私が言っても説得力に欠けるけど、でもさすがに、麦が就職して以降のカルチャーからの離れっぷりの描写が、いささか極端にすぎるのでは、という感はあった…。就職してもカルチャーを大切にして生きている人、いるでしょう。いや、いますよ。知ってるから、そういう人、私。
 オダギリジョーが本作で言ったセリフで、「恋愛ってナマモノだからさ。賞味期限があるんだよ。それ過ぎたら、引き分け狙いでただボール回してるような状態になるわけじゃん」というものがある。本作は、文化、カルチャーというちょっと特別なもの、エモーショナルなものを入り口につながった2人がそれに対する態度を巡って破綻する、という話だが、逆に恋愛感情が終わったあとのパートナーとしての男女の関係において、趣味というのは、文化カルチャーに限らず、2人をつなぎとめるかすがいのような役割を果たすと思うんだけどな(まあ関係を悪化させる種になることもあるんだろうけど…)。
 でもこの2人、まだ若いですよね。就職、別離したからってカルチャーとの関係が終わるわけじゃないし、関わり方も色々な形がありますから…。どうも私はカルチャーというものを、モラトリアム期に通過するもの、就職して社会化してから接しなくなるもの、みたいな文脈には置きたくないきらいがある…。私の従兄弟みたいに40歳をすぎてよく美術館に足を運んでる人もいるし、付き合おうと思えば本当、一生ものの付き合いになりますよ、とは言いたいです…。


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