群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

植本一子

 植本一子の「かなわない」という本を読んだ。家族の日常を中心にした日記なんだけれど、自分の感情にとても素直な文章である。いいことも悪いことも、よい感情も悪い感情も吐き出す。そこが面白いと言えば面白いし、最後のほうは読んでいてしんどかった。たとえば自分を例にとると、文章を書くときはなんとなく力が入ってしまうし、そうするとどうしても文章にフィルターがかかる。ネガティブなことはなるべく文章にしなかったりする。だが、植本一子の文章にはほとんどフィルターがかからない。だから「こんなことまで書くのかw」ということまで書くし、そこが日常にべたあっと貼りついているようで面白い。とはいえ彼女の場合、すべてを文章で晒すことで、より起伏の大きな人生を呼び寄せているような感がしなくもない。「私日記」とでも言えばいいのだろうか。ちょっと前、T井氏という絵描きの方が「男性より女性のほうが持っているものを素直に出しやすい。でも、男性は力技で出してしまう」というようなことを言っていた。植本一子の文章を読んでいると、T井氏の言っていたことがわかるような気がする。僕には多分、彼女のような文章は書けないのだと思う。

かなわない

かなわない