群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「万引き家族」

 映画「万引き家族」を見る。柴田治と信代の夫婦、信代の妹の亜紀、息子の祥太、祖母の初枝が、都会の谷間にあるボロボロの家で暮らしている。皆お金がなく、祖母の年金を頼りにし、足りない分は万引きで埋めて暮らしている。
 彼らの住んでいる家は、例えば襖なんか茶ばんでいて、まるでスラムにある家のようなんだけど、でもそれが光が当たると何だか懐かしい感じがして、皆で食事したり、花火の音だけ聞いたり、それはまるで、今は失われた昭和の大家族みたいなのである。ある事件をきっかけにこの一家は崩れていくのだが、この家に絆があったのかというと、私はあったのだと思う。だが同時に、この一家は正当性や理屈では到底割り切れないものを抱えていて、その割り切れなさを考えば考えるほど、家族って一体何なんだろうという気持ちになるのである。妹の亜希は祖母の初枝の元夫の家から家出してきた身だし、拾われてきたゆりの実家はDV家族だ。現代では、格差などの問題が確かにあって、この家族はそういったことを受けて考え出されたものだとも思うのだが、同時にこの一家の割り切れなさは、家族の形についての問いかけのように思えたのである。
 後半では、一家の素性が明かされていく。よく分からない部分もあったが、母親になりたかったんでしょと問われて泣く安藤サクラの演技は迫真だった。体を張った松岡茉優も良かった。これまでの是枝監督の集大成のような作品だったと思う。


【公式】『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告