群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

万引き

 ぼくが書店に来て十八年になるが、恥ずかしながらこの間、一度もぼく自身の手で万引きを捕まえたことがない。ぼくは、「万引きに注意しろ」と言う係。捕まえるのは社員諸君と決まっていた。
 この前なんか事務所に入っていくと、なんか顔なじみのおっさんが立っとる。思わず「いらっしゃいませ」と挨拶しかかったら、なにか変な雰囲気が漂っとる。万引きの常習犯を捕まえたところだったんですね、これが。
『無愛想な蝙蝠』より

 こんなん笑うわw。
 自慢じゃないけど、私は生まれてこの方、万引きというものをしたことがない。100円の消しゴムどころか、10円のチロルチョコ一個盗んだことがない。周りのクラスメートはほとんどが万引きしていた。後に教師になった奴も、コンサルタントになった奴も万引きしていた。こういう環境(あるいは自身の性格)故に、自分の思春期は帰結的に「生きづらかった」ということになる。
 仮に思春期の万引きを、飲酒や喫煙と同じく「子供から大人になる過程で求める逸脱的行為」と捉えるなら、私はその機会を逸したことになる。思春期には多少やんちゃな方が健康的とも言える。私は多少いびつな大人になってはしまったが、金銭的には(異常なまでに)潔癖だし、まあやりたいことをやっているから、こうなるより仕方がなかったのかなあとも思う。同じ中学と言っても、山手の学校になれば万引きもなかったというから、環境に恵まれていれば、お店から物をくすねるようなクラスメートと出会わずともすんだんでしょうけどね。飲酒や喫煙はともかく、万引きという言葉には今でも嫌悪感がある。