群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

甲子園でのヒトコマ

 今年の九月、久しぶりに行った甲子園のドラゴンズ戦で、ある親子連れを見た。息子とおぼしき男の子は小学校一年生ぐらい、タイガースの帽子をかぶっているんだけど、父親はドラゴンズの帽子とメガホンを身につけていた。
 その親子は、タイガースファンで埋まる外野席のど真ん中にいた。それにもかかわらず、その父親は実に気持よくドラゴンズを応援した。タイガースファンのやじが飛び交うなか、ブランコの打棒に声を嗄らせ、和田のファインプレーにメガホンを鳴らした。息子の男の子は、きまり悪そうにしていたけど、父親は自分の声が大きくなった後は絶えず息子に声をかけた。
 僕は、甲子園の外野のど真ん中でなんて、ドラゴンズの帽子をかぶるのもはばかられると思うんだけど、そのうえ息子を絶えず気づかっていたそのお父さんのことがちょっと格好いいと思った。親子として、そしてライバルチームのファン同士として、適切な距離を保つことを常に心がけていたように見えた。なかなか、ああはできないものである。僕がひいきにしているライオンズを京セラドームで揶揄するうちの親父に、あのお父さんの爪の垢煎じて飲ませたいと思った。