群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「真田丸」

 大河ドラマ真田丸」を見ています。面白いです。
 普通大河ドラマは、主人公が子どものころから始まって、役者も子役を据えることが多いのですが、「真田丸」は、初回から主人公の堺雅人が登場しました。しかも場面はいきなり、武田が織田に滅ぼされるかいなかという、緊迫感のみなぎったシーンです。この導入に、「おっ、今回は面白いんじゃないか」と、心をつかまれてしまうのです。
 役者では、草刈正雄演じる真田昌幸が面白いです。豪胆でいて、食えません。前回放送された第三回では、昌幸は信長の関心を自分に向けようと、息子の信幸(大泉洋)を巻き込んで謀りごとをするのですが、その一件で信幸は父親に愛されていないんじゃないかと、ひどく傷ついてしまうのです。夜中に信幸が一人涙を流すシーンは迫真に迫るものがありました。後日、昌幸は「信長に会いに行くぞ」と信繁(堺雅人)に声をかけるのですが、信幸は「私も連れて行ってください」と食ってかかります。ところが昌幸は、「何を言っている、俺(昌幸)と信繁が死んだら真田はどうなる、そのために長男のお前(信幸)を残していくのだ」とたしなめ、信幸の心のしこりをいともたやすく取りのぞいてしまいました。昌幸が本当に長男の信幸を残しておきたかったのかどうか、本心もあるだろうし、べつの本意もあるように思えます。このあたりの昌幸が、どうしようもなく食えなくていいのです。
 もう一人僕が注目しているのは、堺雅人です。「篤姫」で演じた徳川家定は、初めは人生を投げている将軍でした。それが篤姫が現れることにより、「少しは生きてみるのも悪くないかな」と思いはじめるのです。ところがそう思えはじめたころには、病気で人生は残っていない。あきらめとか、好奇心とかもどかしさとか悲しみとか喜びとか、それらがないまぜになった感情とか、堺雅人はすべて笑顔で表してしまいました。
 武田が滅んだ1582年、堺雅人が演じている真田信繁は15才です。堺はまたにこにこと笑っているのですが、それは怖さや挫折を知らない、好奇心に溢れた15才の青年の眼差しです。42才の堺が、何の邪気も感じさせず演じているのだからすごいと思います。この堺の笑顔が一年を通じてどう変わっていくのか、注目して見ていきたいと思っています。