群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「捨てられないTシャツ」

 都築響一編、「捨てられないTシャツ」を読む。

 これは様々な人たちによる、Tシャツと、それにまつわる逸話と、人生の物語から成る本である。編者の都築響一さんによると、これは「Tシャツという触媒から生まれた『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』なのかもしれない」とある。「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」とは全米の普通の人たちによる「作り話のように聞こえる実話」を集めた本らしい。
「捨てられないTシャツ」の主人公たちは、どこにでもいる普通の人というよりは、どこかクリエイティブな素養を含んだ人たちが多いように思う。そして危うい人たちも多い。ぞくぞくするほど危うくて、魅力的である。一方で、「傍にいるとしんどいんだろうな」と思えるような人たちだ。自分の人生を語っているのか、Tシャツの話をしているのかよくわからない人もいるが、でも不思議とそういう人たちのTシャツは魅力的に見えてくるのである。本書にもあるように、かっこよかったり、かっこわるかったりするのは、おそらく洋服ではなく人間のほうなのだ。だから、その人にしか生きられない人生を生きている人の物語は、たとえどのようなTシャツであろうと、それを珠玉の一枚にするのだと思う。最後は某作家さんが出てきてニヤリ。