群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「きり」

 前回の真田丸、「幸村」は、見ごたえのある回でした。くじで名前を決めるシーン。そして、信繁が豊臣方に加勢するかどうか葛藤するシーンは、暗く落ちた照明のなかで、信繁の心に入り込んでいくようなしんしんとしたものがありました。信繁を演じる堺雅人の顔も変わりました。慕っていた人と別れ、九度山に幽閉され、父親の昌幸が死に、おそれを知らぬただ無邪気だった笑みは消え、深みのあるものになりました。
 前回の「幸村」では、幼なじみのきりが、珍しく信繁に真剣に詰め寄りました。この長澤まさみが演じる信繁の幼なじみ、「きり」という役も面白いなあと思います。ここまで主人公と一緒にいると、ふつう夫婦になるだろうと思うのですが、信繁とは夫婦にはなりません。僕はあまりテレビドラマというのは見ないのですが、こんな役柄はあまり見たことがありません。実の妻より存在感があって、毎度信繁にうざったがられながら、コミカルな掛け合いをしています。前々回ぐらいでは、「もう、菩薩みたいな心境ですよ」ときり本人が口にしていました。普通だったら信繁をあきらめて、他の人と結婚するだろうから、やっぱり、こういう役柄を設定した制作陣が上手いよなあと思います。「真田丸」では本当に様々な趣向を楽しませてもらっていますが、そのなかでも「きり」は、きらりと光る助演女優賞のような存在だと思います。