群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

ま、いいではないか。

 

 あだち充「ラフ」からのヒトコマ。二ノ宮 亜美が、わざわざ遠回りしなくては行けない桜並木を、忌み嫌っていた大和圭介と歩くシーンである。
 二ノ宮は、前から大和に反感を抱いていたから、いわくつきの桜並木をわざわざ大和と歩くということは、それなりの転換のはずなんだけど、あだち充はそこで力んだ描き方をしない。「ま、いいではないか」なのである。頬を赤らめたりもせず、声をうわずらせたりもしない。「ま、いいではないか」。ちょっと力を抜かれてしまうし、微笑ましくさえあるんだけど、知らないうちに二ノ宮亜美に共感を抱いてしまう。一人の女の子の気持ちがそこはかとなく伝わってくる、いい具合に肩の力が抜けたあだち充らしいこの桜並木のシーンが、僕はとても好きだ。

ラフ (1) (少年サンデーコミックススペシャル)

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