群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

あだち充のイラストを見て思うこと


「スローステップ」の主人公、美夏のバッティングフォームだ。いいなあと思う。そして、あだち充は本当に野球が好きなんだろうなあと思う。下半身がしっかりしていて、ほれぼれするほど全身の均整がとれていて、体にできた軸を中心にきれいに体がねじれている。ライト前に飛んだ流れるような球のラインが見えるかのようだ。
 このイラストを見るだけで、僕は近くの河川敷に草野球の試合を見に、自転車をこぎつけたくなる。試合は後半に入っている。ツーアウトでセカンドにランナーがいる。打席が回ってきたのはチームの三番バッター。ホームランよりも、シュアなバッティングが持ち味のバッターだ。そして、何よりこういうときに頼りになる。
 一つボールを見極め、一つファウルにする。もう一つボールを見極めたあと、バットを一閃する。綺麗にセンター前にライナーが飛ぶ。貴重な得点がチームに入る。なんて綺麗なフォームなんだ、と思う。豪快さはないけど、とてもシュアだ。
 その三番バッターのフォームを見たあと、自分で実際にバットが振りたくなる。あんなきれいには振れないけど、それに近いスウィングで。バッティングセンターに行く。自分の格好いいと思う角度でバットを立てて、足をあげてタイミングをとり、そしてスウィング! 綺麗なライナーが飛んだら、なんだかとても清々しい気持ちになる。それは、美夏のバッティングフォームのイラストを見たときと同じ種類の清々しさだ。あだち充のこのイラストは、そういうことを思わせてくれる。

スローステップ (1) (小学館文庫)

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