群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「ジヴェルニーの食卓」

 原田マハの「ジヴェルニーの食卓」を読んだ。原田マハに関してはかなり昔に、日本ラブストーリー大賞を受賞した「カフーを待ちわびて」という小説を読んで以来手をつけていなかったのだが、その後次々と美術に関する小説を発表しており、最近面白く読んでいる。「ジヴェルニーの食卓」は、マティスドガセザンヌ、モネといった画家を周囲の女性たちの目から描いたものだ。直接ではなく周囲の人物たちに語らせることで、画家たちの人物像が浮かび上がってくるようだった。
  原田マハは元キュレーターだけあって、題材にする画家については、生地やゆかりのある地を直接訪ねたりするなど、綿密に調べるらしい。そうした調べごとに加えて、芸術への愛情、高い語学力に基づいた表現力があるから、すごくリアリティを感じる。エッセイの「やっぱり食べに行こう」ではこう書かれている。

 アートをテーマにした小説を書くときにいつも心がけていることは、いかにも「これはほんとうにあったことかもしれない」と感じていただけるように書くこと。ただし、実在のアーティストが登場する場合は、彼らに対するリスペクトと愛情を決して忘れない。そうすることによって、読者がアートに対して興味をもち、自分自身でもっと調べたり、美術館に出向いてくれたりすればと願いを込めている。

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)