群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「彼らが本気で編むときは、」

 DVDで見た映画「真白の恋」と、「彼らが本気で編むときは、」がしみじみとよかった(僕はジョン・ウィックベイビー・ドライバーもルーパーも好きで見るが、こういうしみじみした邦画も好きだ)。
「彼らが本気で編むときは、」では、母親に突然出て行かれた11歳のトモが、叔父のマキオと、マキオの恋人でトランスジェンダーのリンコと暮らして行く様子が描かれる。この映画で一つ感じたのは、血でつながっていない、もっと自由な家族の形があってもいいんじゃないかということだ(これは橋口亮輔監督作の「ハッシュ!」や「万引き家族」にも通じるところがあるように思う)。血がつながっていても、どうしても反りが合わない場合もある。だったら血はつながっていなくても、理解ある人と一緒に暮らしていく方法が子どもにあっていい。
 もう一つは逆説的だが、やっぱり親の影響は連鎖するということである。トランスジェンダーのリンコは、他人のトモに対してまるで我が子のように愛情深く接することができる。それは、リンコが母親から理解を受けたことと無関係ではないだろう。11歳の我が子のトモを置いて出ていってしまうヒロミは、やっぱり母親と問題を抱えていたりする。最後、トモはヒロミと一緒に暮らすことを選ぶのだが、ヒロミはまたトモを置いて出ていってしまうだろう。トモは自分の中で母親の無責任性と闘っていかなくてはいけないのだけど、リンコからのトモへのプレゼントは、血がつながっていなくてもあなたを受け入れてくれる人はいるんだよ、という、血に抗う者への他者からの留保なき愛のように思えたのだ。