群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

「おおかみこどもの雨と雪」

 細田守監督の映画、「おおかみこどもの雨と雪」を観ました。
 主人公の女子大生、「花」は、ある日大学で出会った男と恋に落ちるのですが、その男はオオカミの血を受けつぐ「おおかみおとこ」なのです。花とおおかみおとこのあいだには二人の子どもが生まれますが、そんな矢先、おおかみおとこは命を落としてしまいます。二人の子どもは完全に人間ではなく、おおかみの特徴も持っているため、都会ぐらしではひと目につくので、花は人里はなれた田舎で子どもを育てはじめます。
 人は誰であれ好きな相手の異質な部分を受け入れているのかもしれませんが、花が受け入れる相手の部分は、ともすれば社会からはじき出されてしまうくらい異質なのにもかかわらず、おおかみおとこが命を落とすまでそんなことまるで気にせず幸せそうに暮らしているので、いっそう二人の愛が深く感じられるのです。おおかみおとこを受け入れる花は、ふところが深いというより、疑うことなんて知らず、ただただ流れに身をゆだねているようでした。
 「雪」と「雨」と名づけられた二人の子どもが育っていく過程は対照的なのですが、母親の花からは、楽観や悲観ではなく、ただかけねのない愛情を感じました。花の家には、亡くなったおおかみおとこのために運転免許証と野花とお供えものが備えられただけの簡素な仏壇がしつらえてあるのですが、その仏壇はまるで花の心みたいにつつましく、かろやかでした。アン・サリーさんの主題歌「おかあさんの唄」もよかったです。人知れぬ山奥に、名もなき家族の確かな愛と確かにあった暮らしが、すうっと響き抜けていくようでした。

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

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