群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

父との思い出@今週のお題

 1995年、あの阪神大震災が起こった。当時僕は高校生だった。テレビなどの家具はすべからくひっくり返り、ほとんどの食器は割れ、幸いなことに命は助かったものの、僕も母も家具の下敷きになり、住んでいたマンションは半壊になり、その破壊力は圧倒的だった。地震発生直後、僕たち家族をふくむマンションの住民たちは部屋から地上に降り、まだ指もかじかむ寒い冬の朝、文字どおり着のみ着のままで途方にくれていたのだが、運よく(悪く?)傷ひとつ負っていなかった父は意気揚々として、「おい、隣のマンション見てみろよ」と僕に話しかけてきた。なんだろうとけげんに思い、父についてとなりのマンションに行ってみると、その荘厳たる10階建てのボディには見事に亀裂が入っていた。父は人目をはばかることもなく、そのマンションに入った亀裂を満足気に見上げ、「すげえなあ…」とつぶやいたという。アホである。