群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

ドイツ橋

 中野京子の「橋をめぐる物語」を読む。橋には異界を繋ぐ作用があり、私なんかはまっ先に「千と千尋の神隠し」を思い出してしまうが、本書から「ドイツ橋」より。「ドイツ橋」とは、1919年に、鳴門のドイツ人捕虜たちが建造した橋である。第一次世界大戦で、日本はドイツの租借地、青島を攻め、ドイツ人を捕虜とした。鳴門の板東俘虜収容所の所長、松江豊寿陸軍大尉は自由な気風の持ち主で、ドイツ人捕虜を寛大に扱った。すると収容所は町のように機能し、文化活動が盛んになったり、コンサートが催されたりするまでになったという。これらの捕虜たちが自主的に作ったのが、「ドイツ橋」ということである。この他にも、橋にまつわる様々な話が載っている。中野京子の語り口もいい。ネオリベが進み、格差が広がり、ひどくギスギスしてしまった現代は、この話をどう読むんだろうな。

中野京子が語る 橋をめぐる物語