群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

タモリさんの弔辞

 タモリさんに対する印象が変わったのは、赤塚不二夫さんへの弔辞を聴いてからです。赤塚さんに対するタモリさんの気持ちというのは、肉親に対する以上のものがあるのではないかと思うのです。あの弔辞の場面でいうと、衝動を抑えきれず、くずおれてもなんらおかしくはないはずなのですが、タモリさんがすごいと思ったのは、溢れる感情をぐっとこらえ、赤塚さんに対する自分の衝動を言葉にしたところです。それはまるで、もし爆発すればすべてを薙ぎ払いつくすほどの圧倒的なエネルギーを、奔放にまき散らすのではなく、傍目ではその大きさがわからないほど乱れなく抑制して灯る、透徹した青白い知性のともしびを思わせます。僕はたまにタモリさんの弔辞を読み返して、今、ここに生きているということの可能性を確認しています。