群青ノート

日常の備忘録、あるいは私的雑記帳

『ふつうの人が小説家として生活していくには』

 夏葉社の『ふつうの人が小説家として生活していくには』が良かった。ものを書くということに留まらず、いろいろと刺激をもらえた一冊だった。
 津村さんは1日数時間ずつ、毎日小説を書いているらしい。「気分をあんまり信用していない。今日は筆が乗るとか、そんなんないです」と言っている。だけど土日は完全に休みで、お盆とお正月は世の中と同じだけ休んでいるらしく、それがちょっと面白かった。小説家を目指す人になにか一言アドバイスをするとしたらと聞かれても、「毎日書こう」と答えているし、自分でもポモドーロ・テクニックを取り入れたりしているみたいだ。気分に左右されず淡々と毎日書くのが大事という点は、訳すこととも共通している気がして、とても参考になった。
 また、色々な音楽を聴いたり小説を読んだりして、自分の世界が広がっていくことについてずっとしゃべっているのだけど、次の箇所が印象に残った。 

 いい例かどうかわかりませんけど、たとえば、「ドルトムントバイエルンのCLの決勝がさ」とかっていって、「ただのブンデスやんけって思うけどさ、めっちゃすごかってん。知ってる選手ロイスしか出てないねんけど、ドルトムントすごかって」って話すわけじゃないですか。それでなんかそういう、知識を身に付けたり記憶することによって文脈を維持することを良しとする態度に対する逆襲が、いま起こっているなっていうのは感じます。 p50

恐ろしいです。そういうものが自分の生きるガソリンやったわけですから。それが、記憶や教養や文脈を否定する人たちが開き直る時代に生きてるっていう。 p51

 あと、常見陽平さんの「本十冊読んだら人生は変わるがな!」というコメントの引用。「それで十冊読んで変わらんかったら、もう十冊読め」。聞き手の島田さんも、「といっても、ぼくの場合、たいてい本を読むところから始めるんですが」と言っている。やっぱり、すべては読むことから。今年も読んで書いていこうと思えた一冊だった。世代が近いせいか、出てくる音楽にも馴染みがあったし、ヴォネガットやロスジェネの話なんかも面白かったです。